企画主旨

◇電子書籍は、古い出版産業の制作や流通の構造とは違うところで発展するだろう。もちろん、それは、古い出版産業が崩壊するということではない。それはそのまま残るだろう。電子書籍は、長く出版業界が蓄積したノウハウとは別のシーンで発展するということである。

◇僕は、既存の出版社や新聞社の動きから未来の電子書籍市場は登場しないと思っている。電子市場は、新大陸であり、新大陸へ移行するのは、旧大陸で不満のある人たちだろう。既存の世界で業界を成立させ、不安があるといえども現業のビジネスを成立させている限りは、移行する必要がない。既存の本を電子市場で販売するということはあっても、電子市場でオリジナルなコンテンツを立ち上げる理由はない。むしろそうした追求は、現在成立しているビジネス構造を危うくしてしまうことだから。今はまだ過度期なので、書籍と電子書籍を同時に発売して、そこそこ成功している例もあるが、どう考えても、両方購入する消費者が一般的な人たちだと思えない。電子書籍は、まだその登場の新規性が商品になっているのであって、中身(コンテンツ)そのものが商品になっているわけではない。機材の普及を含めて、まだ時間がかかる。

◇電子書籍の方法論は、まだ、登場していない。いろんなところで、いろんな人が模索を開始しているのだろう。僕もトライしてみる。僕の方法は、まず古い構造の分析と解体、そして再編成へとつなげていく。将来の電子書籍産業へのアプローチの一つのスタイルが見つけられればと思う。

◇電子コンテンツは、「つながりっぱなしの世界」の上で展開されるものだろう。ここでは、単独な才能をプロデュースするだけでは意味がない。そうした才能は、むしろ既存のコンテンツ業界で花開かせるべきだ。電子コンテンツは、「リンク」「シェア」「オープン」などといった、電子メディア固有の性質を理解した上で、小さなトライアルが伝播してムーブメントになっていくことだと思う。遊ぼうぜ。


●企画の背景

◇本の制作過程は、一般的には以下である。
1.企画調整(著者と出版社との本の完成イメージの調整)
2.著者執筆(取材、研究含む)
3.編集作業(内容点検、アドバイス、校正作業など)
4.著者原稿入稿
5.デザイン、装丁
6.印刷原稿入稿
7.取次搬入
8.書店店頭販売

◇電子書籍の場合は、こうなる。
1.企画調整(著者と出版社との本の完成イメージの調整)
2.著者執筆(取材、研究含む)
3.編集作業(内容点検、アドバイス、校正作業など)
4.著者原稿入稿
5.デザイン、装丁
6.テキスト、デザイン素材などの要素を準備してオーサリング作業
7.アプリケーション・ダウンロードサイトへの登録(App Store、Android Marketなど)
8.ネット上での販売開始

◇これまでの出版社の業務の役割は、以下である。
1.著者の発掘、アプローチ、企画調整
2.出版企画の作成。内容面はもちろん、販売予測、制作コスト、流通コストなどを検討して、収支予測の作成。これまでの出版は、印刷コストを出版社が投資するものなので、投資が回収出来ない企画については、発行出来ない。
3.発行に際してのプロモーション、書店などへの営業活動。
4.在庫管理、客注などへの対応。
5.売上管理、印税処理など経理業務。

◇電子書籍については、印刷費が不要ということが重要。出版に対しての資金管理会社的な機能が不要になるということ。そうなると、出版社の業務は、編集、デザインなどの制作についてのものと、プロモーションなどの業務となる。

◇編集、デザインについては、特に出版社という組織形態がなくても、個人レベルが集まれば出来る。(僕はこれを出版バンドと呼んだが、著者、編集、デザイン、画稿(写真、イラストなど)のスタッフが音楽のようにバンドを組めば、入稿原稿までは制作出来る)。ただし、ギャランティは、出来高に対しての配分となる。力のある人たちなら、このバンドに対して小さなファンドを組んで投資家を募ることも可能だろう。

◇特に既存の書籍編集では出来なかった、マルチメディア対応やインタラクティブ性を電子書籍に加えていく場合には、エンジニアのバンドへの参加が必須になる。また、音楽や映像についてのスキルも必要とされる局面もあるだろう。

◇プロモーションについては、これも印刷費用と同じように、出版社が先行負担する販売促進費である。電子書籍では、旧来の書店向けの販売プロモーションとは性格が変わると思うが、行う場合のコストは、著者なり出版バンドが負担することになる。

概要

●企画案

◇僕自身は著者の立場である。著者はプレーンのテキストを用意して出版社に入稿して、それ以後の処理を出版社にお任せして、発行日を待つ。

◇この流れを解体して、まず、僕自身が、プレーンのテキストを公開する。定価を付けてダウンロード販売とする。

◇読者は、このブレーンテキストをダウンロードして、プリントして読むのも良いし、PDFリーダーで読むのもよい。あるいは、自分なりにInDesignなどでレイアウトして、読んでも構わない。

◇それで、このプレーン・テキストを装丁したいデザイナーがいたら、装丁したものを僕に見せて欲しい。僕が了解すれば、そのデータをエンジニアの方に渡して、アプリ化する。同一のテキストで複数の電子書籍が登場しても問題ないだろう。あとは、それを購入する読者が装丁を含めた商品として選択すればよい。

◇電子書籍の販売益については、販売手数料と印税管理の事務費などを引いた金額を、著者と、デザイナー、エンジニアとでシェアする。


●トライアル

◇まず、僕の最初の単行本「企画書」(1981年発行の古書だがw)について、この方式で実験してみる。解説は、AR3兄弟の長男・川田吐夢くんが書いてくれている。

テキストのダウンロード先は、ちょっとお待ちください。


●将来
◇この方式が動けば、未編集のテキストを公開し、まずこのテキストを編集したい人を募集する。次にデザイナーを募集し、出版バンドを結成するということになる。「電子書籍やろうぜ!」ということになる。