企画主旨

壁が窓になり、窓が新しい広場になる日。
「よはとつ図形」の具体化。

これは、インターネットが始まった頃、橘川に見えたビジョン。

概要

目の前に壁がある。いくぶん古ぼけている。
もしかしたら万里の長城か、破壊される前のベルリンの壁。

目の前の壁は、不動の構え。
しかし、実は、少しずつ、微妙に右から左の方向へ移動している。

これが壁ではなく、時間を実体化したものであると気づいた。

しばらく壁を見ていると、
何か、落書きをしたくなった。

深呼吸する言葉を落書きする。

そのまま眠る。

朝、目覚めると目の前の壁には何も書かれていない無垢の壁になっている。
壁をまきもどしてみると、寝る前に書いた落書きが残っていた。

毎日、落書きを続けた。

お絵かきセットも入手したので、絵を描いたり、
写真を貼ったりすることも覚えた。

ある時、Twitterがはじまり、Twitterでフォローしている人のツィートを
リンクすることを覚えた。いろんなサイトの、かっこいいと思うフレーズを
壁に貼ったりしていた。

そのまま眠る。

朝、起きてみると、いつも無垢の壁だけがある。

ある日、壁にドリルで穴をあけてみた。
そこから覗くと、そこには別の壁があって、僕ではない誰かが、同じような作業を
していた。

不思議なことに、別な箇所に穴をあけると別の壁が見えるのだ。
あちこちに穴をあけて、他人の壁の落書きを覗いて楽しんでいた。
つまらない壁穴はふさいだ。

ある日、玄関のチャイムが鳴り、
行ってみると何人かの男女がいて、あなたの壁を覗いているものですと名乗った。
それで、あなたの壁の落書きが面白いので、全部公開してくれないか、と言った。
公開すると、過去の落書きを含めて、時間を超えて見ることが出来る。

ちょっと躊躇したけど、みんな良い顔をした人たちばかりなので、公開に応ずる
ことにした。僕の壁は、公開され、誰もが見ることが出来るようになった。
スクールして過去の壁も読むことができるのだ。

人が大勢集まったら、広告代理店の人がきて、おたくの壁にポスターを貼らして
くれと言ってきた。いいですよ、と答える。

若い人がやって来て、あなたの壁は面白いので、僕も、この壁に落書きしたい、
と言ってきた。いいですよ、と答える。

だんだん、僕の壁に落書きしたがる人が増えてきた。
壁は横スクロールしかできなかったのだが、そういう来客のために
上下のスクロールも出来るようにした。
来客の落書きは上下の部分でやってもらうことにした。

やがて別の日とがやってきた。
あなたの壁は、もはや壁とはいえず広場になってきているので、
落書きのためのペンキセットの自動販売機を置かせてくれないか、と言ってきた。
いいですよ、と答える。

上下が騒がしくなってきたけど、
僕は相変わらず毎日、無垢のままの壁に向かって落書きを続ける。